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はじめに
Futurist(フューチャリスト)コミュニティでは、過去に様々な未来洞察(Futures Thinking)などを記載してきております。社会実験も含めて、100年先を現状にバックキャストするカルチャーを築いていく布石を少しずつ行なっております。[[ Futurist(フューチャリスト)コミュニティとは? ]]
さて、今回は、『アルゴリズム金融/M2M金融について 〜お金はどんどん「見えなく」なっていく〜』と題して、記載したいと思います。
前半では、現状の金融(すでにお金は「見えなく」なってきている & サービスに「組み込まれ」始めている)について記載し、後半では、未来の金融(アルゴリズム金融 & M2M金融など)について触れたいと思います。
※なお、別途「金融の未来洞察についてのFuturist手法サンプル」についても掲載予定です
すでにお金は「見えなく」なってきている
最近、日本でもようやくキャッシュレスが浸透し始めてきましたね。
「お財布を持たない」(iPhoneやクレジットカード/電子マネーで支払い)の人も増えたのではないでしょうか?段々と、「お金って硬貨でも紙幣でもなく、デジタル上の数字だよね?」という感覚になってきている子供たちも出てくるかもしれません。
さらに、こんな話もよく聞きます。「気づいたら、いっぱいサブスク契約していて、想像以上にお金を使っていた」などなど。お金をお財布や貯金に入れていれば、肌感でお金を物理的に感じやすく、「そこにある感」がありました。しかし昨今では、”どんどんお金は見えなくなってきており“、気づいたら増えていた/減っていたという感覚になってきています。
そう、すでにキャッシュレスやサブスクなどで、「お金は見えなく」なってきているのです。
そして、ドルでも円でも金でもビットコインでもゲーム内通貨でも、全てデジタル上の数字でしかなくなってきているのです。
金融はサービスに「組み込まれ」始めてくる(Embedded Finance)
さて、デジタル上の数字となったお金は、今インターネットを介するサービスなどに「組み込まれて」いっています。これを「エンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance)」と言います。
簡単にいうと、これまで金融機関が行なっていた「為替」「融資」「預金」「金融商品」などの仕組みが、サービスベンダのサービスに組み込まれていくという意味合いです。
もはやデジタル上の数字= “情報” と化したお金は、IT(プログラム)でやり取りした方が効率が良いのです。わざわざ人(労働力)を介する必要もないのです。金融機関はインフラを提供し、API(口)を開くだけで、あとはサービスベンダーがITで自分たちのサービスと金融機能を組み合わせれば良いのです。
これは、ある意味で「全ての企業がフィンテック企業になる」可能性を秘めています。2020年にa16zのプレゼンテーションでもそのように述べられています。
もはや「サービスを活用しているだけで信用が貯まった → サービスベンダ経由でお金を貸してもらえる」なども可能となり、日々の活動からその人の信用レバレッジがかかりやすくなります。良くも悪くも。
インターネットによって、情報の廻りが良くなりましたが、次はお金の廻りが良くなるということです。
アルゴリズム金融(Web3.0やDeFiに関連)
そして “未来” です。
これはWeb3.0やDeFiに関連する話です。
これが面白い点の一つ(というか肝)は、「経済創造」が民主的に可能になるという点です。
Embedded Financeは、あくまで「サービスに既存の法定通貨などの仕組みを組み込む」話でした。これは新たな経済の仕組みを(通貨発行の仕組みや再配分の仕組みまで)完全に創り出すというものではありません。あくまで法定通貨や、それに基づくグローバル経済のゲームの “おまけ” のようなものでした。
しかし、Web3.0やDeFiのようなものは、もっと画期的です。
通貨発行のようにトークンを新規発行し(これはまるで中央銀行のよう)、それらのトークンを通じて「独自の経済循環設計」などが可能です(この部分はプログラムによるプロトコル設計で実現&パブリックブロックチェーン等の仕組みによって特定の主体だけでのコントロールを不可とするガバナンス設計を含む)。トークンは1つでも2つでも、その系の中で様々な機能を果たすトークンを複数組み合わせても良いのです。(当然法定通貨とも為替取引することもできる)
ちょっと難しい話になりました。
もう少し簡単に言うと、、、そうですね。(・・・正直最終形とは思っていないので誤解を招く例かもしれませんが・・・)「Play to Earn(遊ぶとトークンがもらえる)」などの言葉はご存知でしょうか?その他には「Walk to Earn(歩くとトークンがもらえる)」でも「Sleep to Earn(寝るとトークンがもらえる)」でもなんでもいいです。要は、「その系(独自経済圏)に参加する人たちにとって価値がある行動」にインセンティブ(報酬/動機付け)を循環させるということが可能になるということです。(なお、「報酬とは労働による対価」という意識が現代人には強いですが、そもそも労働とは何か?・・・歩くことは労働ではないのか?・・・仮に労働でなかったとしたら、報酬や対価は廻らないのか?・・・そのようなルールは絶対的には存在しないのです。「何に価値があるのか?」は、それを価値だと思う人たち/社会/環境に寄るのです(相対的)。あるゲームにハマっている人たちは、10万円払ってでもそのゲームでの “伝説の剣” を欲しいと思うかもしれませんし、ゲームのサービサーは、ユーザがプレイしてくれるだけでトランザクションやデータを入手できるのでユーザアクションそのものに価値を感じるかもしれません。このように、あらゆる側面から「価値」について捉えてみると、想像以上に多様な価値が存在しています。しかしそれらの多様な価値を十分に可視化したり循環させたりレバレッジをさせること[※価値タイズ]は、Web3.0以前では難しかったのです。)
なお、次に重要なのは、「経済圏のあらゆる参加者で、価値を共同所有する」ということです。
例えば、SNSの経済圏(投稿や良いねなどの行動に経済が巡るエコノミー)があるとします。従来のSNSでは、例えばFacebookに何回投稿したところで、何回いいねを押したところで、Facebookのサービスの活性化に貢献していますが、あくまでFacebookはMeta社のサービスであり、彼らとその株主がリターンを得るだけでした。しかし、SNSの経済圏をブロックチェーンなどを駆使した分散構造で創出した場合、その経済圏の参加者で価値をシェアすることが可能になります。特定の主体ではなく、その系に貢献(アクション)した人が価値を共同所有するのです。
例)SNSに投稿したり、いいねをすると、報酬が循環する経済 (画像は4年前のsteem/steemit ※本記事下部の余談箇所を参考)
それは、従来の法定通貨/それに基づくグローバル経済の基では困難でした。なぜなら、通貨発行や経済循環のコントロールなどは、国(中央銀行など)が中心となって、そこから派生する様々な世界の利害関係の影響がとても強いからです。独自に経済圏を “新たな系” として設計し、そこで独自の価値循環を起こすということは、民主的にそうそう可能なことではなかったのです。このような「経済創造の民主化」こそがWeb3.0等の肝と言っていいと思います。
【余談(参考までに)】
私は3~4年前(2018年~2019年)、steemというブロックチェーン上のSNS(当時世界100万人以上のユーザ)の日本アンバサダーとして活動していました。steemでは、投稿したり「いいね」をするだけで、トークンが循環していました。サードパーティとしてBotを作って、Botにいいねさせるなども可能でした(つまりBotに働かせる→これはどうなの?論もありましたが…)。また、トークンをデリゲート(委託)して、金融でいう”信用貸出”のようなことも可能で、参加者間で互いの活動をレバレッジし合ったりもできました。これはネイティブトークンのSTEEMに加え、SPやSBDなどの機能トークンや、経済循環をブロックチェーンベースで自動循環させるプロトコル(コミュニティのガバナンスで自律分散運用)などによって、コミュニティの世界観が成立していました。DPoS(Delegated Proof of Stake)という、完全とは言えない分散のアーキテクチャであったため、長く生き残るパブリックブロックチェーンのサービスとは言えませんでしたが、独自経済圏での参加イメージの解像度は、非常に上がったことを記憶しています。昨今話題のWeb3.0は4~5年前から始まっていました。(以下は4年前の2018年のsteem/steemitに関する資料ですが、参考までに)
このように、行動に価値が循環していくと、だんだんお金を払ってやり取りをする感覚ではなくなってきます。デジタル上で勝手に数字が流動して巡っている感じになっていきます。
M2M金融(冷蔵庫が牛乳を買う)
そして “さらに未来” 。
物と物がやり取りして金融的な価値流動が起こる時代、M2M金融(Machine to Machine)です。
表題にあるように、「冷蔵庫が牛乳を買う」ような世界。例えば、 “冷蔵庫には賞味期限が安全な牛乳が常に2本入っていて欲しい” といったニーズをMachineが自律的に実現します。これはIoT/5G6Gのような世界が実現していることも不可欠ですし、高度に自律的な判断にはビッグデータやAIの発展も前提かもしれません。
MachineはAIかもしれないので、A2MとかA2Aとかかもしれませんし、人間(Human)にも相互作用(インタラクション)してくるかもしれないので、M2HとかA2Hとかもあるかもしれません。
ちなみに、MachineやAIは、ミクロにもマクロにも広がっていきます。ミクロには細胞や粒子のレベルまで、マクロでは宇宙空間にまで広がっていくでしょう。人と人のやり取りが主流の現在の経済・社会から、このミクロ・マクロに広がるMachineやAIなどの物同士のやり取りを含めて「より自然をも含んだ」経済・社会、へと広がっていくでしょう。(環境知性)
このように金融は、M2Mにまで広がると、ミクロにもマクロにも及んでいきます。
まさに水流や血流のようですね。
お金というより、水流とか血流のようなイメージになっていくのかもしれませんね。
Futurist(フューチャリスト)コミュニティについて
Futurist(フューチャリスト)が集まるコミュニティ。「未来は “待つ” ものではなく “歩む” ものである」を掲げる。都内複数拠点で月1程度で活動。slackやZoomでは日常的に交流。各々がバックキャストするFuturist活動の相互支援やFuturism探求の視察・企画・共有会なども実施。 [ 活動内容の参考は こちら ]
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